Artist's commentary
『人生逆転』3巻発売直前記念SS「愛の気持ち」(ネタバレなし。ネタバレ有はカクヨムへ)
いよいよ、明日発売です!
3巻を読んだ後に、発売直前記念SSを読み直すことをおすすめします。
―一条愛視点―
たくさんの楽しい思い出を後にして、私たちはキッチン青野を出る。
外は思った以上に寒くて、驚いてしまう。彼は私を送ってくれることになった。
「寒いね」
「はい」
そう言いながらも、お互いの手を温め合う。
もう自然と手が動いていた。彼も拒むなんてことは一切考えないで結んでくれる。
「幸せな時間でした、本当に……」
昨年の孤独な時間なんて遠い昔のように、今の私は恵まれていた。
「来年はもっと楽しくなるよ。もっと、楽しませてみせる」
そう決心なのか覚悟を固めているのかわからない言葉を返されて、さらに幸せを痛感した。
自分がこんなに幸せでいいのだろうか。そう不安になりながら、すぐにマンションについてしまう。部屋まで送ってくれるという彼と一緒にエレベータに乗り込んだ。
私は、彼の背後に回り込んで彼の背中に顔を預けた。
彼は何も言わずに、「大丈夫だよ」と言ってくれる。何が言いたのかもわかってくれている。だからこそ、彼に安心信してすべてを任せることができる。
「信じられないんです。センパイと出会ってから、運命が変わったみたいに幸せなことばかり起きて」
「うん。でも、それはその前にたくさん頑張ったからだと思うけど」
そうやって、過去の私まで認めてくれる彼の優しさで心がいっぱいに包まれる。
思わず彼の身体に手を回してしまった。この時間はたぶん誰にも邪魔をされない。そう確信した。
「ありがとうございます、センパイ。あの日の屋上で私を見つけてくれて……たくさんの大事なものを取り戻してくれて……ずっと、一人で生きていくしかないと思っていたのに……この世界に戻してくれた。そして、あの日から私の横にはずっとあなたがいてくれている」
自分でも感情が高まってしまって、何が言いたいのかわからない。
でも、彼にはやっぱり伝わっていて……私の手をゆっくりと包んでくれる。
「約束したじゃないか」
「私でいいんですか。意外と嫌な女かもしれませんよ、ズルいし」
「そのズルさは、俺を守るためにしか使っていないじゃないか。それはズルじゃない。俺だってひとりじゃ耐えられなかったよ」
彼はそう言って優しく抱きしめてくれた。

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