Artist's commentary
【PFLS】市街地にて
サフラーは建物の二階部分で息を潜めていた。
上空を埋める竜種、地上を蹂躙する巨大生物、それらに対抗するファイアランドの知識と知恵の集大成で編み出された兵器。
首都レッドヴァルは戦場と呼ぶにはあまりにも混沌とした域となってしまった。
そんな場所で
3、2、1…
心の中で数を数え、首都へ踏み込んでくる敵兵に毒を仕込んだ短剣を投げる。
ウォルナットに特別に調合してもらった毒はほんの小さなかすり傷からでも体内へ侵蝕をはじめる劇薬だ。
誤って自分を傷つけないように細心の注意を払って取り扱う必要がある。
どさり
先ほどの剣が的中した兵士が急激な痺れに襲われ地面に倒れこむ。
そこへカゲが駆け寄り急所を食いちぎり、屍を自らの影の中に取り込み喰らい、短剣を回収して戻ってくる。
巨大な敵に対抗すべき術が無い彼は一歩兵に出来る事を 地味に 静かに 何度も何度も繰り返す。
「それにしても・・・」
街に目をやる。
石造りの建物は燃えにくいとはいえ 鎮火した時にどれだけの数が人が住める状態で残っているだろう。
現時点では落としてもいないはずの首都をここまで荒らされた事に対する憤りと変わり果てた光景にやるせなさを感じ、奥歯を音が鳴るほど噛みしめた。
そこへ
男が現れた。
ガチャリ。 ガチャリ。
軍を率いるでも無く独りで歩くその男は、バチバチと何かが燃え爆ぜる音の中でもひときわ石畳に響く自らの足音を気にかける様子も無い。
サフラーは事前に頭に叩き込んでいた敵兵の制服情報に思考を巡らせる。
思い当たる軍は無かった。
だが
あいつは強い
あいつは危険だ
あれをこれ以上進ませては駄目だ
状況分析からではなく ただただ直感がサフラーの脳内に警笛を鳴らす。
呼吸を整え短剣を構える。
男は重装備ではあるものの、頭部にむき出しの部分がある。
通りすがった際に背部から狙えば外さないだろう。
地上より林檎約22個分の高さにある頭部に狙いを定め
3、2、1…
キンッ!!!
一瞬何が起こったかわからなかった。
男は振り向きもせずに持っていた見慣れぬ武器をぐるりと身体の側面で回し、サフラーが放った剣を弾いたのだと気づいた時にはカゲが地上へ駆け下り始めていた。
ほんのわずかにこちらへ向けられた男の顔。割れた兜から眼光が走ったように見え、背筋にぞわりとした感覚を覚えた。
撤退の指示を出す間もなく男へカゲが踊りかかる。
あいつは強い
あいつは危険だ
あれに近接戦を挑むのは無謀
今すぐここから離れるべきだと計算せずとも答えが明白に出ているのに
「カゲ!!」
置いていけるか!と。
日々連れ添ってきた相棒の名を叫び 地上へと飛び降りた。
お借りしました ベルクさん(pixiv #72980621 »)
四章でベルクさんの衣装が変わってましたのでパラレル時空での戦闘なのでこちらのタグ(pixiv #73803284 »)を使わせていただきます!
サフラーとカゲ(pixiv #73012691 »)