大路晴希。

小学生の頃、他校の生徒と混じって遊んでたときにいた、やたらと運動神経のいい奴。
ハルキって名前だから男だと思ってたけど、高校に入って再開したら女子だったのには驚いた。
中学の間に全然見なかったのは、水泳で結構良い所まで行って忙しかったかららしい。

うちの高校は女子水泳部しかないんだが、ひょんなことからそこの顧問に気に入られ、
男手があると助かる、などということでなし崩し的にマネージャーにされてしまった。
当然そこには期待のホープとして注目されている大路もいたわけで……

顔立ちが中性的なだけに女子からもやたらモテる大路は、いつからか「水泳部の王子」なんて呼ばれるようになっていった。
性格的にも相性が良かったのか、個人的には普通に気の合う女友達──って感覚だったんだけどな。

体型の、その…特に"胸"のせいで記録が伸び悩んでると相談を受けたのをきっかけに、お互い本格的に意識し合うようになったんだと思う。
図書館に通い詰めて、水泳の本を読み漁って…できる事は何でもやった。
二年生の夏、彼女が優勝を果たした大会の後に…彼女からの告白で、付き合う事になった。

そして迎えた三年生。
顧問が別の高校へ異動となり、新しく赴任した顧問からマネージャーを外されてしまった。
曰く「受験に備えて勉学に励むべし」と。当然といえば当然か。
代わりとして新しい顧問の教え子である大学生がコーチ兼マネージャーとして面倒を見てくれることになったらしい。

なかなか会えず仕舞いでいた頃に、「今年まだ見せてなかったから…部活の、だけど」と写真が送られてきたのにドキドキしながも季節は過ぎ、受験も近付きつつあるクリスマスイブにお互いなんとか時間をあけて、デートをした。

翌日の夕方、友人から…晴希によく似た女性が駅前にいたと連絡があった。
クリスマス当日は家族と過ごす…って言ってたような…
連絡したけど、返信は無かった。

その夜、無題の動画ファイルが送られてきた。
日付は11/15、晴希が水着の写真を送ってきた日と…12/25。クリスマスの当日。

彼女がコーチの"女"にされた日と、彼女がコーチの”オンナ”にされた日……だった。