Artist's commentary
【PFAOS】銀の帆、西へ【シルバーセイル】
「やはりこの島々は私(わたくし)にとって、まっさらな新しいお庭のようでしたわ。」
シルバーセイルは針路を西へ。目的地は始まりの港。
新大陸での大きな戦が終わり、疲弊した兵たちは本国へ帰還していく。
補給司隊は一部、新大陸に築き上げた居住施設、復活させた遺跡の研究施設の維持のために
船員、ゴーレム、原住民などの人員を残し、一旦帰路に就くことになった。
後から来た王宮に慣れた兵たちとは違い、ここでの暮らしに馴染んだ者も少なくなかったようだ。
三国共に大規模に戦いを続ける余力は無いようで、新大陸は膠着状態…というよりは自然に、
三国の人間たちが足を踏み入れる以前の状況に、ゆっくりと戻ってくようだった。
元より新大陸は星光石に関わらない土地の方が圧倒的に広く、星光石を得るという目的も達せられた為、
軍人にとっての戦略的価値は大きく下がり、半ば放置される状況に至ったと思われる。
その後、シルバーセイル補給司隊は、帰還後にはハイペリアをはじめ同盟国と連携して、
改めて残された遺跡や未知の技術の研究を続けていく予定、だったのだが…。
突如アステラに起こった内乱により、情勢は大きく変動していく。
戦火はハイペリアとガスタリアの大部分をも襲ったのだった。
当然、船団を維持する予算などは白紙となり、隊は解体、活動自体が凍結される寸前ではあったが、
戦時にあっても活動に理解を示す支援者たちの存在により、活動の内容を変更して存続が決定する。
船の数などは大きく減らしたが、主要な船は船籍なども支援者たちに移譲され、
軍船として戦争で損耗することは免れた。
ハイペリア、ガスタリアの陥落時には、人民や文化財、学術研究資料等の脱出を助け、
その後を見据えた人材と文化と文明の保護に奔走した。
エルノールやその他の地域に於いては、持てる技術と知識を提供し各地域の発展に寄与する。
二国から亡命した人民や、戦争を予見して移住し開拓された地域で、新たな経済圏を築くに至った。
これにはインティニアの古い地域では、再開発の為に多くの史跡や既存の建造物等々が障害となるため、
まったく新しい地域に新しい技術を基幹とした集落を築ける、という利点もあった。
戦争地域から逃れた人民や財産は、新たな技術と知識とともに、新たな土地に生きる道を見出したのだった。
――時は戻り、新大陸での戦いが終わりを告げ、仮初の平穏を取り戻しつつあったあの日。
本国への帰還の準備を終えたステュキス卿は、とある浜辺でくつろいでいた。
「やはりこの島々は、私にとってまっさらな新しいお庭のようでしたわ。」
新大陸の島を去るその日、彼女は笑っていた。
ずいぶん以前に引き上げられたであろう空っぽの宝箱に座り、確信に満ちた笑みを浮かべる。
彼女自身、国の命を受けていたものの、個人的な純粋な興味としては、
いわゆる戦力としての星光石のみを求めていたわけではなかった。
その未知の力が指し示す次の道にこそ、期待していたのである。
ハイペリアをはじめ、構造的に疲弊し限界を迎えているように思えた旧大陸の状況から、
解放してくれる何か、新大陸の日々でそのヒントを得たのだろう。
開拓のために準備した、旧来の技術を駆使した武装は使い果たした。
それは未知への畏れの象徴でもあったのかもしれない。
未知から既知に変わった新大陸で次に必要な物は――。
「ここでしか得られない作物や薬品の原料…、鉱物、燃料、巨大生物の痕跡…。
独特な環境でしか醸成できない酵母なども、まだまだ多くありそうですわね…。」
旅が始まった時にあった漠然とした期待と不安は、具体的な目標へと形を換えていた。
身を守る以上の過度な武装は、新大陸に馴染むにはむしろ障壁となるかもしれない。
彼女は竜たちとの戦いや原住民との日々を振り返り、技術の転用の道を模索していくことになる。
環境に適応した装備や研究施設も、長い時間をかけて少しずつ洗練されていくはずだが
独りでは、その道はまさに茨の道に違いない。
しかし彼女が振り返るその傍らには、多くの船員たちと、この旅で新しく出会った者達がいる。
たとえ一度別れ道を違えても、またいつか、その道は交わるだろう。
複雑に往来する幾筋もの航路が、最後には母港に再び集うように。
旅の終着点だと思っていた場所が、新しい出発点となり、いつかこの浜辺もまた誰かの母港となるのだ。
「さて、そろそろ帰路に就くとしましょうか。――私たちの港へ。」
――その後新大陸はカイルらをはじめとする、旧大陸の鎖から解き放たれた者達によって開拓されていく。
そして幾年か後、旧ガスタリア奪還に動き始めたジェラルド達の後方に、
銀の帆を掲げる船団の姿があったという。新大陸からの物資をもたらす船団。
先頭に立つ古めかしい船が、煌めく海面に照らされ鈍く輝く。
その船の名は――。
【御礼のご挨拶】
シルバーセイル補給司隊の皆様、またご乗船いただいた皆様、ギルドへのご参加ありがとうございました…!
大変な時期の開催となりましたが、皆さんとご一緒できて光栄でした。
主となる物資の補給のみならず、さまざまな便利な道具、ゴーレム
食糧、冒険や研究等々、バリエーションに富んだ投稿の数々、楽しませていただきました。
小説とイラストの連携、関係性によってキャラクターが成長したり等々、
本当に見ごたえのあるものばかりで、新しい発見に満ちていました。
また、劣勢が続く中でも2つの戦場で星光石の獲得に貢献できたようでほっとしました。
本当にご参加いただいた皆様のおかげです。
劇中での情勢は混迷を極めるようですが、これまで新大陸で得た技術の活用、
新しい仲間たち、開拓した地域を駆使すれば新たな道は必ず拓けるはずです。
ハイペリアの銀の帆の未来に、栄光あれ!
それではまた。