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Artist's commentary
アリイェイスと金の林檎
三の月と三の週、誠実なる天魔アリイェイスがグレゴリウスの孫娘たるルーティヤに呼ばれた事には―― 「アリイェイス、もうすぐで満月じゃ。今年も祝いのプレゼントを期待しておるぞ」
「今年もなにもそんなの初めてですが……」
「細かいことは気にするでない」
「それに満月などと……まさか年に十二回も祝わせるおつもりで?」
「もちろんじゃ。めでたいじゃろ?」
「はあ……」
ルーティヤが求めるには、遠くイディアの地に生ると聞く金の林檎を持って来いとのこと。それを食べた者は若返ることが出来るという。こうしてアリイェイスはしばらくの間、夜の天海からその地に向けて旅をした。ラヴィオニア国を超え聖なる川のほとりにある古城には、もはや草が生い茂り、その中庭は林檎の木で満たされていた。実を一つもいだアリイェイスは、その城に住む女神フレイアの娘に差し出し、金の林檎のありかを問う。しかし娘は何も言わず木の枝でアリイェイスをツンツンする。
「ちょ、痛、話を聞きなさい。しかも何故お腹ばかり狙うんです」
三十六回目のツンツンに耐えたアリイェイスは、フレイアの元に連れて行かれた。
「あらあら、金の林檎なんて話しは聞いたことがありませんが……」
お腹をさすりながらがっかりするアリイェイスを見てフレイアは言った。
「誠実なる悪魔さん、ならば代わりにこの城を覆い時計塔の上に咲き生る蜜柑の実を差し上げましょう」
それは金色に輝く果実で、持ち帰ってルーティヤは見るなり「おお、これじゃこれじゃ。この間二六〇〇年前に本で見たのとそっくりじゃ」
と言ってソテーにして食べてみたところあまり美味しくなかったそうな。めでたしめでたし。